2019年11月
-The Beyond Disciplines Collection- 科學技術イノベーション政策における社會との関係深化に向けて 我が國におけるELSI/RRIの構築と定著/CRDS-FY2019-RR-04
エグゼクティブサマリー

 科學技術の発展に伴って生じる倫理的、法的、社會的課題についてあらかじめ研究し、対処するための取組がELSI (Ethical, Legal and Social Issues:倫理的、法的、社會的課題)であり、米國のヒトゲノム計畫で初めて本格的に取り組まれた。歐州においては、研究からイノベーションまでの過程全體を通じて、多様なステークホルダーが參畫し、社會のニーズや期待に合致するような形で科學技術を推進するための取組が、RRI(Responsible Research & Innovation:責任ある研究?イノベーション)として発展してきている。
 我が國においても、第5期科學技術基本計畫において、多様なステークホルダーが雙方向で対話?協働し、それらを政策形成や知識創造へと結び付ける「共創」を推進することが重要であるとされている。しかし、それらの取組の具體化と実行は、これまで限定的なものにとどまっている。

 持続可能性と多様な社會的価値を踏まえた社會?経済の発展を実現するためには、「共創的科學技術イノベーションの実現」を科學技術イノベーション政策を推進する上での戦略的な柱として改めて位置づけ、ELSI/RRIに関する幅広い取組を研究開発?イノベーションの取組と一體化して著実に進めることが必要である。
 その際の取組の方向性と、當面特に重視すべき取組として、以下のものが挙げられる。

取組の方向性

  1. 多様なステークホルダーとの協働を促進する仕組みの構築
    社會の多様な価値を反映した科學技術イノベーションの実現のためには、科學技術イノベーション政策を科學コミュニティに閉じた取組とするのではなく、科學者、市民、地域住民、企業、行政、NPO/NGOなど、社會を構成する様々なステークホルダーが參畫する取組として、國全體の科學技術イノベーションのシステムを開いていくことが重要である。
  2. 持続的な取組と組織?人的ネットワークの形成
    「共創」のためのELSI/RRIの取組を持続的に推進するとともに、それを擔う組織および人的ネットワークの形成を進めることが必要である。従來のような時限的なプログラムではなく、多様な専門性をもった人材の參畫を促しつつ、継続的に活躍できる環境を整備する必要がある。

當面重視すべき研究開発の取組

  1. 研究開発?イノベーションプログラムへのELSI/RRIの組み込み
    政府やファンディング機関が実施する、社會的影響が大きいと想定される科學技術に関する研究開発プログラムにおいて、研究開発の予算の一定割合をELSI/RRIの取組に充てることや、研究開発プログラムの実施計畫の中にELSI/RRIに関するテーマを設定することにより、研究開発?イノベーションのプログラムと一體化した形でELSI/RRIの取組を組み込むことが必要である。
  2. ELSI/RRIの取組を支える基盤の強化
    1.のようなELSI/RRIに関する取組や活動を支援するため、多様なステークホルダーが參畫する場の運営や意見集約などのELSI/RRIに関する専門的能力を持つ組織の機能強化やそれを擔う人材の育成などの取組を合わせて行うことが必要である。また、そのような場やプロセスに各種情報やデータ、様々な知見を集約、分析し、提示する組織や機能の強化も必要である。
  3. ELSI/RRIの推進體制の構築
    上記1及び2の取組を進める上で、重要な役割を擔う政府やファンディング機関等において、ELSI/RRIに関する取組の推進を擔う部署を定め、責任ある推進體制を構築することが必要である。また、これと合わせて、ELSI/RRIに関わる関係者が自主的なネットワーク、コミュニティを作り、関係者自らELSI/RRIに関する活動や取組、新たな手法やツール、認識されている課題や問題點等に関する情報共有や検証を行っていくことも必要である。

※本書は、令和元年8 月に発行した調査報告書「科學技術イノベーション政策における社會との関係深化に向けて/CRDS-FY2019-RR-04」(ISBN 978-4-88890-651-7)の內容を再録したものである。

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関連報告書
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